旅行や出張の際に利用する機会の多いホテルは、その立地条件やサービス内容、ブランドなどによって宿泊料金は大きく異なりますが、私たちが大きな病気や怪我で医療機関に入院したときに支払う入院基本料にも一定ではなく、大きな差があります。それでは何を基準に病院の入院基本料金は決定されるのでしょうか?
病院の場合は、入院している患者さんに対して看護師が何人配置されているかによって、差が付くようになっています。一般病院の入院基本料は15:1~7:1まで4段階が定められており、入院患者さん7人に対し看護師を1人という7:1看護がもっとも多くの基本料(1,555点/日 1点=10円)となっています。
7:1入院基本料を算定するためには、当該病院の職員の7割が看護師であること、病棟の平均入院日数が19日以内であること、職員一人あたりの月平均の夜勤時間が72時間以下である、といった基準をパスしえいる必要があります。看護師だけ基準を満たしていても、医師の配置基準を満たしていない病院は減額されます。
病院の経営という側面からこの制度を見てみると、10:1と7:1では看護配置は1段階しか変わらないもの100床差でざっと1億円も収入が違うといわれています。そのためより高い看護基準を満たす体制を整えることは、死活問題にもなります。また患者さんから見ても、看護師が多いということは患者さん1人をケアできる時間も増える、室の高い医療を受けることができるなどのメリットがあります。
しかし、夜勤の負担をはじめとした苛酷な勤務環境を原因に離職する看護師が後を絶たないため、医療界は慢性的な人材不足になっています。2006年の診療報酬改定で、新たに7対1入院基本料が導入された際には、経営体力に余裕のある大学病院や都市部の大病院が、新基準をクリアし増収につなげようと、看護師の採用へ一早く動いたため、中小病院はまずます人材が不足することになりました。
病院の経営を安定化させ、質の高い医療を継続的に提供するためには、育児休暇や短時間正職員制度、夜勤の軽減、時短勤務などで看護師のワークライフバランスを実現できる働きやすい病院の体制を整備することが急務となります。看護師の離職率は、政令指定都市、東京23区、小規模、医療法人の病院で高くなっており、逆に短時間正職員制度や新卒スタッフの教育体制が充実している病院では利殖が少ない傾向となっています。
少子化による労働人口の減少が加速することから、国は2008年から東南アジア諸国と経済連携協定を締結し、看護師と介護福祉士候補の受け入れをはじめましたが、言葉の壁を乗り越えて、短期間のうちに国家試験に合格する必要があるため、看護師不足の抜本的な解決にはなっていません。そもそも、厚生労働省は医療現場の労働問題に長年目を向けてこないで放置しておいて、切羽詰ったら海外の人材に頼るという姿勢に問題があり、大きな批判が寄せられています。